トキワコラムTOKIWA COLUMN

カラーコスメOEM国内トップシェアのトキワによるコラム

商品開発

【ウェビナーレポート】失敗しないメイクアップコスメ開発 開発時のポイントとは? -ここだけは押さえよう!コスメ開発のポイント(前編)

本コラムは、2023年11月16日に開催された「失敗しないメイクアップコスメ開発 開発時のポイントとは?」での講演内容をもとにしています。

ウェビナーでは、化粧品開発をはじめるための事前知識やコンセプト設計の重要性、コスメ開発における前提知識、OEMメーカーの選び方と交渉のコツなどについてお話しいたしました。

(前編)ここだけは押さえよう!コスメ開発のポイント(ELATE COSME WORKSさま)
(中編)OEMメーカーが伝える、初めてのコスメ開発の注意点(トキワ)
(後編)化粧品コンサル×OEMメーカーによるQ&Aセッション(ELATE COSME WORKSさま&トキワ)

登壇者のご紹介

まずは、今回のウェビナーの登壇者を紹介します。

1人目は、今回のウェビナー進行を担当する株式会社Cogane studioの植村 元さま(以下、植村さま)です。植村さまが代表を務める株式会社Cogane studioでは、化粧品や健康食品関係のビジネスマッチングサイト「BENTEN」というサービスを提供しています。このサービスは、化粧品や健康食品ビジネスに関するあらゆる悩みを投げかけるだけで解決できるサイトとなっています。

2人目は、ELATE COSME WORKSの赤星 恵美子さま(以下、赤星さま)です。赤星さまは、約20年にわたり化粧品業界で活躍している化粧品開発コンサルタントです。大手化粧品メーカー2社での企画開発に携わり、オーガニック化粧品メーカーでのプロジェクトを手掛けた経験があります。

現在は、企業向けの化粧品や雑貨の企画開発、化粧品OEMのコンサルティングを中心に活動しており、美容メディアの記事監修にも関わるなど、化粧品業界において多岐にわたる専門知識と経験を有しています。

3人目は、株式会社トキワの菱川 淳介(以下、菱川)です。菱川は株式会社トキワに入るまでは、国内の化粧品メーカーに勤務し、メーカーからOEMに商品の製作を依頼するなどの業務を行なっていました。現在は株式会社トキワのセンターオブイノベーション部に所属しており、主に新規コスメを立ち上げるお客様向けのサービス開発を担当しています。

Session1:ここだけは押さえよう!コスメ開発のポイント

赤星さま:今回お話しするトピックスは、化粧品を初めて作るお客様からいただくことの多いご相談や、よく問題となる場面などのつまづきやすいポイントをお話しいたします。

1.化粧品の販売に必要な免許

初めて化粧品を作られる方から「化粧品を作って販売するのに免許は必要ですか」ということをよく質問されます。

通常化粧品の製造販売には、「化粧品製造販売業」「化粧品製造業」の2つの許可が必要です。しかし、それらの許可を持っているOEMメーカーから仕入れて売る場合、許可は必要ありません。

輸入の場合も同じで、ご自身で輸入して販売される場合は、先ほどの2つの許可が必要になります。ですが、それらの許可を持っている会社に輸入代行をしてもらい、そこから仕入れて販売する、ということであれば許可を得ておく必要はありません。

ただし化粧品のパッケージには、製造販売元としてOEMの委託先や、輸入代行会社の会社名が記載されます。みなさんの会社名については、発売元、もしくは販売元として、一緒に記載することが可能です。

2.化粧品開発のスケジュール

化粧品開発にかかる期間は短くても約6か月、通常は約1年くらい、もしくはそれ以上かかることがほとんどです。

最近ではトキワさんでも取り組まれているような、既存処方をカスタマイズするサービス(TOKIWA KOBO)などもあります。そのようなプランの場合、開発期間を大幅に短くすることが可能です。しかし、フルオリジナルで化粧品を作る場合は、先ほど申し上げたような期間が必要です。

開発期間が長い理由としては、開発に必要なたくさんの工程があり、それぞれの工程に時間を要するということがあげられます。また、開発する商品やOEMメーカーの都合によっても、期間が大きく前後してきます。

開発期間の工程で注意すべきなのが、容器の製造期間(リードタイム)です。リードタイムには、容器サンプルの取り寄せ期間や印刷用デザインのやり取りに必要な期間は含まれていません。リードタイムはあくまでも発注してから納品されるまでの期間であるため、着色や印刷などの期間も含めた場合、プラスで約3か月ほどが必要となります。

したがって、販売時期が決まっている場合は期間を逆算し、処方を決めるのと同時に動く必要があります。

ただし、この容器のリードタイムを短くする方法もあります。

  • 印刷ではなく、ラベルで対応する
  • 小ロットの在庫がある容器から選ぶ

注意点として、在庫容器の場合デザイン面での選択肢が少なくなるケースもあることを押さえておく必要があります。

化粧品開発のスケジュールで注意すべきプロセス

注意すべきプロセスは、処方内容やOEMメーカーによっても変ってきます。そのため、どの工程でどのくらい期間を要するのかの目安を事前に聞いておくと良いでしょう。

試作期間

試作期間とは、希望した処方でOEMメーカーが中身サンプルを作り、発注元へ発送する期間を指します。試作期間については、1回の試作につき約1週間から2週間かかってくるケースがほとんどです。

当然1回の試作で処方が決まるということはほとんどなく、修正して何度も再試作を繰り返します。そのため、処方が決定するまでに1か月〜2か月かかることもあります。

中身が決まる部分ですので、これだけ時間がかかるということを頭に入れて、しっかりと取り組むことが必要です。

品質安定性試験

品質安定性試験は新規処方の場合に行なわれるもので、出来上がった処方に対し過酷な条件下でも品質が保たれるかの試験を行います。通常は約6か月間の試験期間が必要で、品質保持期限3年を保証するための試験です。

ただし、元々OEMメーカーが持っている既存処方に美容成分を加えたり、色調整だけを行うという場合については、この試験をスキップできる場合があります。

医薬部外品申請期間

レアケースかもしれませんが、時々医薬部外品として有効成分を配合した処方で作りたい、という方もいらっしゃいます。

医薬部外品の場合、厚生労働省に承認申請書を申請する期間が追加され、開発期間とは別に約6か月〜8か月程の期間が必要です。承認されなかった場合は再申請となってしまうため、注意が必要です。

3.化粧品開発で決めなければいけないこと

次に化粧品開発で決めなければいけない項目ですが、結構たくさんのことを決めていく必要があります。

ざっくり3つのカテゴリーに分けてみました。

企画商品OEM条件
・ブランド名
・販売名
・ターゲット
・コンセプト
・商品価格
・販売方法

・テクスチャー/香り
・配合する成分
・配合しない成分
・ベンチマーク
・容量
・容器/パッケージ
・部外品or化粧品
・オーガニックの有無
・輸出の有無
・ロット
・納期
・製造費用

このように、化粧品開発をするうえで、決めなければいけないことがこれだけ多くあります。

OEMメーカーに依頼するときに各項目の希望を出し、予算やOEMの技術的制約などを考慮しながら、最終決定していくことになります。したがって、化粧品開発するのに半年から1年以上といった長期のプロジェクトになってしまうことや決めることが多いため、難解な事業だと言えます。そのため、プロジェクトが失敗に終わるケースや、当初の計画以上に開発期間や労力がかかってしまうというケースも少なくありません。

しかし、これまでお伝えした事前知識を前提条件として理解し、これからお伝えする進め方のコツを少し実行するだけでもスムーズに化粧品開発ができるのではないかと思います。

その方法についてお伝えいたします。

コンセプト設計の重要性

コンセプトとは「商品を通して消費者に伝えたいメッセージや思い・企業の考え方」を指します。コンセプトは化粧品開発を進めるうえで重要な軸となるため、はじめにしっかりと決めておくことが大切です。

コンセプトを決めるうえで関係してくる要素として、まず「ターゲット」を決めることが大切です。化粧品を使う人はどのような年代で、どのような性別で、どのような嗜好があるのかといった人物像を明確にする必要があります。

2番目の要素は「訴求ポイント」です。これは、商品を通してアピールしたいポイントや他社製品にない魅力は何なのか、使うことでユーザーにはどのようなメリットがあるのかなど使う場面やベネフィットを明確に設定していきます。

最後に「ストーリー」です。これは、今回なぜ化粧品を開発することになったのか、その開発背景や現状への問題提起などです。開発にまつわるストーリーがあると、コンセプトの説得力が増すだけでなく、商品を決めていく上での解像度も上がります。

コンセプトがなぜ重要かというと、先ほど化粧品開発で決める項目がたくさんあることをお伝えしましたが、これらを決めていくための基準になるのがコンセプトであるためです。

コンセプトを土台とし、処方や入れたい成分などを決めていきます。

取り組んでいるうちに、ほかの成分も入れたくなってしまったり、魅力的な選択肢がたくさんあり決められなくなったりすることも少なくありません。その際に、企画段階で決めたコンセプトにもう一度立ち返り、方向性を確認したうえで最終的に決めていく、という流れになります。

容器やパッケージだけでなく、ネーミングや価格などについても、多くの選択肢がある中での意思決定は非常に難しいことです。しかし、コンセプトをしっかり作っておくことで、ぶれない一貫したメッセージのある商品を作り上げることができます。

優先順位を明確にしよう

これまで、コンセプトを土台にして決めていくというお話をしました。しかしながら、全ての項目が希望通りに行くということはまず少ないと思っておいた方が良いと思います。

条件によって変わりますが、OEMメーカーができること・できないことが出てきたり、プロジェクト予算の都合で何かを諦めなければいけないということも出てきます。そこで、プロジェクトが「何を大事にする事業なのか」を明確にすることが重要です。

特に下記の部分に関しては、希望条件をリストにしたうえで、さらに優先順位を決めていく必要があります。

商品OEM条件
・テクスチャー/香り
・配合する成分
・配合しない成分
・ベンチマーク
・容量
・容器/パッケージ
・部外品or化粧品
・オーガニックの有無
・輸出の有無
・ロット
・納期
・製造費用

絶対に譲れない条件は何なのか、妥協してもよい、優先順位が低い項目は何なのかを明確にしていくことが重要です。

基本はコンセプトを軸に決めていくのですが、優先度の低い項目については、その他の選択肢も視野に入れて検討することになります。プロジェクトがどの項目を優先するかによって、製品の仕様はもちろん、OEMメーカーの選択肢も変わります。

例えば、納期については販売日が決まっていて絶対に動かせない場合、その日程に対応できるかできないかだけでもどこの会社にお願いするかが変わってきます。あまり短い期間での開発には対応していないというOEMメーカーも結構多い印象です。

また、ロットや予算も同じく、絶対に小ロットで作る必要がある場合や、補助金の関係などで予算が決まっていて動かせないといった場合でも、可能不可能が出てきます。

一方、条件を先に伝えることで、ロット数や予算に応じた選択肢を提案してもらうこともできます。

さらに、使いたい成分や原料の取り扱いがあるか、もしくは持ち込み原料ができるか、といった条件に対応できるかどうかについても変わってきます。

容器に関しては、例えばアイブロウ1つとっても、パウダータイプや繰り出しタイプ、ペンシルタイプなど、形状は色々あります。ペンシルの製造には対応していない企業や、OEMの技術的な条件で選択肢が限定される場合もあります。

したがって、先にどうしても譲れない条件を明確にし、優先度が高いということを伝えておくことが重要です。

そうすることで、条件にフィットした提案をしてもらえたり、早々にOEMの会社をどこにお願いするかを絞ることができ、開発期間を長引かせることは少なくなります。

一方、優先順位を明確にしておらずプロジェクトがかなり進んだ状況で譲れない条件が出てきてしまった場合、最悪プロジェクトが振り出しに戻ったり、企画案から練り直したりといった事態にもなってしまうため注意が必要です。

OEMメーカーの選び方

ここでは、OEMメーカーの選び方を4つに分けて詳しく解説していきます。

1.作りたい化粧品の実績があるか

OEMメーカーを選ぶポイントとして、作りたい化粧品(剤型)の実績があるかが重要です。剤型というのは、例えばパウダーなのかリキッドなのか、クリームなのか、などの中身性状を指します。

先ほどお伝えした、繰り出しタイプなのかペンシルなのかといった、工場での充填方法に関わる部分も含めて、希望する剤型の実績があるかが重要です。技術的な実績があれば、ノウハウもあり、選択肢の提案が期待できることや、トラブル発生時の対応も安心できます。

2.自社工場を持っているか

自社工場がないOEMメーカーもあります。しかしながら、やはり工場を持っていることで品質面でのコントロールのしやすさや、技術的な懸念点へのフィードバック、フォローが迅速に行なわれるというメリットがあります。

また、どのような現場で作られているかの話もしやすいかなと思います。

3.サポート体制が充実しているか

こちらは契約条件等で確認する必要がある部分です。

製品不良が起きた場合どのような対応になるのか、薬機法関連のサポートをしてくれるかどうかなども重要なポイントです。

4.提案力やレスポンスの早さ

提案力やレスポンスの早さはOEMメーカーの方針によっても異なります。例えば、希望する条件に対応できない場合、こういった条件に変えたらできますよ、などの代替案を出してもらえるかも大切です。

基本的には「できない」という返答で終わることが多いのですが、代替案など前向きの提案をしてくれるところであれば、今後様々な場面での選択肢が広がると思います。

レスポンスの早さに関しては、担当者さんにもよりますし、忙しくて混んでいる場合もありますが、時々1か月くらい返事がないとご相談頂くこともあります。長期間返事がないところは、よほど余裕がない限りやめた方が良いと思います。

最終的には長期間一緒にプロジェクトを進行していくパートナーとなる会社なので、会社のスタンスが似ているか、相性はどうかも重要なポイントだと思います。

交渉するときのコツ

最後に交渉するときのコツを3つに分けてお話しします。

1.具体的な希望内容を明確に伝える

まず1つ目に大切なのは、OEMメーカーが条件に合うかどうかを見極めた上で、具体的な希望内容を明確に伝える、ということです。これは、希望する条件を少しずつ小出しにするのではなく、最初から希望する条件をすべて提示するということが大切です。

そのため、先程お伝えした決めなければいけない沢山の事項をリスト化し、さらに優先順位を付けた上で相談することで、より希望条件が伝わりやすくなります。

2.感覚的な要素も具体的に伝える

2つ目に、中身を作っている時はテクスチャーや香り、色味など、感覚的な要望を伝える場面がたくさん出てきます。そこで、ベンチマーク品(参考品)を例にして伝えることをおすすめします。

口頭やテキストだけで伝えようとすると、「柔らかい・固い」「赤み・青み」などの表現だけではどの程度なのかが伝わりにくく、何度もやり取りを繰り返すことになります。そのため、希望するテクスチャーや香り、色に近い参考品をOEMメーカーに送り、そこから微調整していくのが一番伝わりやすい方法だと言えます。

3.不明点や現在のステータスを積極的に確認する

3つ目に、開発期間が長くなると、今どの工程が進行しているかが分からなくなることもあります。その際、遠慮して先方からの連絡を待ってしまうケースも多いですが、解釈の違いで誤解が生じることもあるため、その都度不明点やステータスなどを遠慮なく聞くことが大切です。

素晴らしいOEMメーカーに出会えたのであれば、その会社の技術やノウハウをいかに引き出せるかで、開発の精度が変わってきます。そのためには、先ほども申し上げたような具体的で明確なコミュニケーションが重要です。

本コラムのまとめ

本コラムではコスメ開発を進めていく上で共通してつまずきやすいところに絞ってお話ししました。

実際には、本日お伝えした事項以外でもそれぞれのプロジェクト特有のつまずきポイントもたくさんありますが、基本的には本日お話しした内容を軸に進めていただければスムーズに進められるかと思います。個別で困ったことも出てきた際にはELATE COSME WORKSさまにご相談いただければと思います。

中編の記事ではウェビナー「失敗しないメイクアップコスメ開発 開発時のポイントとは?」でのトキワによるセッション、「OEMメーカー視点でのコスメ開発のポイント」のレポートをお届けします。

URL:https://www.tokiwa-corp.com/column/959/

後編の記事ではウェビナーを通じていただいておりました質問に対して化粧品開発のコンサルタントとOEMメーカーそれぞれの視点からお答えした内容をまとめます。

URL:https://www.tokiwa-corp.com/column/966/

中編、後編もぜひご覧いただければと存じます。

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