トキワコラムTOKIWA COLUMN

カラーコスメOEM国内トップシェアのトキワによるコラム

商品開発

【ウェビナーレポート】今求められているクリーンビューティとは?クリーンコスメの開発からプロモーションまで

本コラムは、2023年7月25日に開催された「今求められているクリーンビューティとは?クリーンコスメの開発からプロモーションまで」での講演内容をもとにしています。

ウェビナーでは、クリーンコスメブランドである7NaNaturalの商品開発、実際に実践しているプロモーションとコミュニケーション、クリーンビューティのトレンド解説、今後のブランドの在り方と商品開発についてお話しいたしました。

ブランドと開発の両サイドが語る7NaNaturalの商品開発

まずは、今回のゲストを紹介します。

7NaNatural ブランドディレクター・クリエイティブディレクターの中村 圭さん(以下、中村さん)は株式会社メディアジーンでデジタルメディアを運営し、約20年の編集者経験をお持ちです。

美容やファッションに興味を抱き、情報発信企画やプロモーションの経験から、女性向け美容企業のコミュニケーションプランやプロダクトアイディアを育ててきました。

トキワラボプログラムで「7NaNatural」というブランドを立ち上げ、2022年にELLEジャポンのクリーンビューティーアワードなどで賞を受賞。サステナビリティにも注力し、「7NaNatural」が2年目に突入した今、商品バリエーション拡充や成長戦略を進めていく予定です。

三井 大輔さん(以下、三井)は、株式会社トキワの処方開発本部に所属、「7NaNatural」の製品開発にも携わっています。約15年の処方開発経験を持ち、主に日焼け止めスキンケアなどの数多くのアイテムを手がけてきました。消費者視点に立った化粧品作りをモットーに、ユーザーが使用するたびに驚きと満足を感じられるような化粧品開発に取り組んでいます。

7NaNatural誕生の経緯

中村さん:「7NaNatural」というブランドは、メディア企業である株式会社メディアジーンが持つ発想と情報発信力を活かし、人々と地球を幸せにする持続可能なプロダクト体験を提供するクリエイティブチームです。

約3年前に、Z世代の価値観を探求し、ライフスタイルや価値観に着目したインサイトのリサーチを行いました。これを元に、肌感覚とアイディアを集結させ、トキワのアクセラレータープログラムに提案をおこないました。その後、アイディアを形にし、現在の「7NaNatural」が誕生しました。

ブランドは「人生も世の中もナナイロに。」というスローガンを掲げ、日本初のクリーンビューティブランドとして、天然由来成分100%の高発色カラースティック7色やカラーパレットを提供しています。

現在、合計8商品がブランドのプロダクトとして展開されています。

ブランドにかける想いや大切にしていること

中村さん:私たちのブランドには大切なコンセプトが7つあります。

まず第一に、クリーンな製品作りと心地よい体験を追求し、作り手と使用者の両方が心地よさを感じられる、持続可能な構造を作りたいという思いが込められています。

また、私たちは人々や社会、地球が抱える7つの課題に向き合い、解決を目指すブランドであることを掲げています。

これらのコンセプトと、ナチュラルな天然由来成分100%のアプローチを組み合わせ、ブランド名「7NaNatural」を生み出しました。

1.Trend Free|トレンドに左右されない自分らしさ

良いものを作ることや、クリーンなものを作るのはもちろん大切です。しかしそれ以外に、この商品を使う方にどうなってもらいたいか、どのような気持ちになっていただくか、という価値観の部分をとても大切にしています。

「Trend Free」とは、広告やビジュアルで提示される美しさの固定観念に左右されず、自分自身の美しさやスタイルを自由に受け入れ、楽しむことを意味します。

私たち自身も、ものを開発するときに固定観念に囚われることがあったため、トレンドに左右されるのではなく、自分の直感に従ってメイクを楽しむことを推奨していきたいと考えています。

2.Guilty Free|使いきれるミニサイズのコスメティックを作る

「7NaNatural」のカラースティックは、小指ほどのコンパクトなサイズです。

これは、周りの世代やZ世代、各世代のリサーチから、口紅やアイシャドウを使いきれたことがほとんどない、という課題に対処したいという思いから生まれました。使いきれないのに新しい商品をまた購入する、というサイクルが当たり前のようになっていましたが、やはりそれは心地悪く、どこかで罪悪感を感じてしまいます。

そのため、使いきれるミニサイズのコスメティックを作ることが、コスメロスという課題に向き合う、というのが「Guilty Free」です。

また、もともとカラーパレットに使用していた馬毛のブラシは、動物実験や動物素材に反対する私たちの考えに合わなかったため、排除しました。私たちは動物実験にも反対しています。

3.Free to use|メイクアップの方法に正解はない

「Free to use」とは、メイクに正解はなく、自由なスタイルで楽しめることを意味しています。「メイクアップがすごく苦手なんです。上手じゃないんです」とおっしゃるお客様も少なくありません。

しかし、「7NaNatural」が提供する天然由来成分100%のカラースティックは、どこに使っても簡単にぼかすことができ、失敗せずに自分らしさを表現できるという特徴があります。

ですから、自分に合ったアレンジで試してみることがおすすめです。失敗や、上手くできないという思いを抱かずに、自由なスタイルで楽しんでほしいと考えています。

4.Waste Free|使用済み容器は回収しリサイクル

「Waste Free」のコンセプトをもとに、カラースティックのサイズを使い切れるミニサイズにし、口紅も通常の半分ほどのサイズに抑えることで無駄を減らしています。さらに、カラースティックには65%、カラーパレットには100%再生プラスチックを使用し、容器のプラスチック削減に取り組んでいます。

また、公式サイトから購入いただいた際には、返送用封筒を同梱しています。使い終わった容器を封筒に入れて返送していただければ、私たちはその容器を再利用し、新しい製品に再生させる取り組みを行っています。

5.Chemical Free|天然由来成分100%、7つの化学成分不使用

パラベンやパール、アルコールや紫外線吸収剤など、7つの化学成分を使用せず、天然由来成分100%の「Chemical Free」な製品を製造しています。

6.Free your mind|固定観念にとらわれない自由な生き方を目指す

私たちは、「Free your mind」の価値観をとても大事にしています。

年齢や性別、国籍などのあらゆる固定観念にとらわれず、ひとり一人の自由な生き方をエンパワーメントしていくことを「7NaNatural」は製品を通して発信しています。

7.Economic gap Free|選ばれやすい価格帯のモノづくり

「Economic gap Free」は、安心安全な製品を誰もが手に取り続けられる世の中を作ろうという取り組みです。

「7NaNatural」の口紅やチーク、アイシャドウは、天然由来成分100%であり、価格もカラースティックが2,900円、カラーパレットが2,000円という、手ごろな価格設定となっています。

高校生から子育て中の主婦の方まで、幅広い方々が手に取り続けられる価格帯での提供により、経済的な状況に関わらず、多くの人々が選び続けることができるよう努力しています。

7NaNaturalとしてカラースティックの開発時に大変だったこと

中村さん:カラースティックの開発は初めての経験だったため、色合いや製造について、トキワさんから用語や概念を学びながら進めていきました。

特に大切にしたかったのは、ただ天然由来成分100%の成分であればよいということではなく、カラーコスメとしてきちんと発色を楽しめる天然由来成分100%かつケミカルフリー、この2つを両立をしたものを作りたいという想いがありました。

そのため、天然由来成分100%かつ化学成分を不使用にして、どうやって高発色さを実現するかが一番大変でした。トキワさんとは、「もう少しお願いします!」みたいなやり取りをたくさんさせていただき、発色についてはトキワさんの中でも深く検討いただいたポイントかなと思っています。

また、高発色をより体感していただきやすいよう、すべての色に大きさや色の違うラメを配合しています。ラメによって、口紅を塗った際にメタリックな立体感が出るので、発色を一層楽しんでいただけます。

ラメも、マイクロプラスチックではなく、天然の「マイカ」という成分を使用しています。その結果として、お客様から「こんなに天然由来成分100%で発色って楽しめるんですね」と言っていただくこともあり、私たちも非常に嬉しく思っています。

トキワとしてカラースティックの開発時に工夫したこと

三井:中村さんがおっしゃられた通り、着色材の部分が大変でした。天然由来にこだわると、色の鮮やかさと高い強度を出すのは非常に難しいため、ここをクリアするために、何度も試作を重ねました。

あともう1つ、実はこの天然由来成分100%というお題を今回いただいた上で一番難しかったのが、使用感と安定性の部分です。リップ処方の構成から説明すると、口紅は基本的にオイル成分とワックス成分、着色剤の3つの構成からできています。

中でも骨格となるワックス成分がしっかりしていないと、スティック形状を保つことが難しく、うまくいきません。合成ワックスを使えば硬さをしっかり出せるため、ワックスの配合量を減らせば柔らかい使用感や滑らかな使用感が簡単に実現できます。

しかし、天然由来のワックスを使用する場合、どうしても強度が出ず、スティックの形状維持が難しかったり、時間が経つと柔らかくなってしまったりなどの不具合が出てきます。

さらに、強度が出ないためその分ワックスの構造が脆く、口紅から汗をかいたようにオイルが染み出してしまう現象も起こります。そのため、これまでは天然由来のワックスで作る場合、ワックス成分を多めにし、硬い処方にする必要がありました。

しかし今回、処方を1から見直し、基礎実験から始めて35パターンのオイルとワックスの組み合わせを検討したことにより、1つのワックスを見いだすことに成功しました。

それが、「ひまわりワックス」です。

ひまわりワックスを使えば、合成ワックスと遜色ない強度を口紅で出すことができ、滑らかで安定性も良く、使用感も良いカラースティックを作ることができました。

6月に発売された新色のカラースティックについて

中村さん:現代では「多様性」という言葉をよく耳にしますよね。私たちはカラーメイクにおいて「Free your mind」の価値観を実現したいと考えています。多様性を単なる言葉で理解するのではなく、視覚的でかつ体験可能な形で感じることが大切だと考えています。

私たちが目指すのは、多様性を自分自身でポジティブに受け入れることです。自分って美しいんだとか、肌の色に自信を持つなどの肯定的な体験を、カラーメイクを通じてどう生み出すかを私たちは考えていました。

今回の「ナナシ」という新しい色は、「enjoy your color」をコンセプトとしています。シアーなレッドブラウンの色味で、透けるような色で設計されています。

リップなどに塗る際、唇の色がちょうど透けて、その人ならではの色に色が重なって色味が完成するような、その人ごとの色が完成するような新たなカラー体験を作りました。

初回製造ですでに3分の2強ぐらい売れており、好評をいただいています。皆さん個人個人をエンパワーするようなカラー体験を1つ形にできたのかなと思っています。また、ナギサさんというメイクアップアーティストさんとコラボレーションして、情報発信やメッセージ発信もおこなっています。

7NaNaturalが実践するプロモーション&コミュニケーション

尾中:製品は作るのも大変ですが売る、もしくはブランドの認知を図ることも重要なポイントだと思います。7NaNaturalが実践するプロモーションのコミュニケーションについて、中村さんから詳しくお話を伺えればと思います。

プロモーション&コミュニケーションを生活者に届けるために工夫していること

中村さん:私達はこれまで、メーカーとして物作りをしてきたわけではなく、生活者視点でインサイトを紐解いたり、社会に向けた情報発信をしたりなどの活動をメインでおこなってきました。

そのため、ブランドとお客様という関係性ではなく、生活者視点での開発がすごく大切だと思っています。例えば、口紅やアイシャドウって使いきれない、などの小さな違和感や解決したいことを起点に商品開発やプロダクト開発が始まっています。

コミュニケーションプロモーションについても、生活者視点で、人と人として対話をする、ということを大切にしています。お客様からは、ブランドが人格を持っているような形に見えるのではないかな、と思います。また、新商品の紹介において、価格の提示よりも、お話をすることや情報の提供を重視しています。

例えば、新色を紹介する際には、「このカラースティックはいくらです」というよりも、新色のコンセプトである「enjoy your color」を通じて、ひとり一人が美しさを実感できる製品として紹介しています。

物を売るというより、体験を提供するというような訴え方や情報のつなぎ方を心がけています。そして、「人生も、世の中も、ナナイロに」というキャッチフレーズを掲げている理由は、製品を作り届ける活動が、この世界や人生に対する多様性の考え方をより具体的に示し、ロールモデルの生き方やスタイル、装いを通じて、自由でエンパワーされた価値観を共有し、お客様とのつながりを深めるためです。

このフレーズは、個々の自由な生き方や装いを可視化し、多様性を強調しています。お客様と語り合い、自由な価値観を共有することで、ひとり一人がエンパワーされ、共感を得ることを大切にしています。

7NaNaturalが実践するプロモーションとコミュニケーション

尾中:7NaNaturalが実践しているプロモーションとコミュニケーションについて、具体的にお伺いできればと思います。

使い続けられる店頭什器の設計・製造

中村さん:自分たちのオフィシャルサイト以外でも、現在全国で約50店舗ほど、7NaNaturalの商品を売っていただいています。店舗で商品を販売しようとすると、「什器」という商品を並べる棚が必要になります。

他社ではこれをどのようにしているかというと、次々に新商品や新色が出てるため、そのたびにすごい速さで作って捨てるという、什器が使い捨てされていくのを目の当たりにしました。

私たちは什器を使い捨てにしたくないと考え、使い続けられるサステナブルな什器を開発するために、デザイン事務所のスタジオポエティックキュリオシティさんとコラボレーションしました。

青い什器の写真は、「カラーMDF」という捨てられる木くずを固めた素材で、韓国で作られています。例えば店頭で什器が汚れたとしても、木くずなのでヤスリで擦れば汚れが落ち、削って綺麗に使い続けられます。

また、ブロックで什器を構成してるので、置く店舗によってはワイド幅を調整して使用でき、汎用性の高い、続けられる什器を作りました。この什器も、販売のタイミングで情報としてプロモーションをして、皆さんに興味を持っていただきました。

メッセージを込めた「ななみくじ」

店頭で販売を開始する際、どの店頭で販売が始まりました、というプロモーションも兼ねて、店頭で商品を手に取っていただき、どのようにメイクアップを楽しんでもらいたいのかというメッセージを「ななみくじ」というおみくじの形にしました。

7人のクリエイターの方たちに言葉を紡いでいただき、おみくじと一緒に商品として渡し、引いていただくというものです。また、買った商品とおみくじが一緒にSNSで拡散されていくようなようなプロモーションも実施したりしています。

自分にとっての「自由とは」を言葉にしてもらう

コンセプトの1つで、すごく大事にしている「Free your mind」という、自由な生き方をエンパワーするというものがあります。

自分らしい生き方や多様性の意味を明確にするために、「me and you」というメディアと一緒に、クリエイターやアーティストにそれらの概念を具体的な言葉で表現してもらいました。

また、読者やお客様にも、自分たちの自由についての考えを言葉にし、必要な情報を共有する取り組みを行っています。さらに、7NaNaturalがブランドとして、プロダクトやメディアを通じて、社会や価値観をよりエンパワーするメッセージを発信し、世界に影響を与えていくために、メディアとのコラボレーションを行っています。

クリエイターの方にも沢山参加していただき、各々のSNSでも発信していただいたので、7NaNaturalについてと、その思想と商品の情報が拡散される良い機会になりました。

カラーパレットを用いた保育園でのワークショップ

7NaNaturalの商品はメイクするためのコスメではありますが、カラーコスメというのは、ただメイクをするという目的だけでなく、もっと色々な機会で力を発揮できると考えています。

昨年は、カラーパレットを使用したワークショップを実施しました。

「ジェンダーフリー」な体験や、アートとジェンダーの融合を通じて、個々の自己表現を大切にすることを目指し、カラーパレットを使用して子供たちが性別に関わらず自分の好きな色や表現を楽しむ体験を提供しました。

7NaNaturalのカラーパレットは天然由来成分100%なので、子供たちが顔に使用しても安心です。

そのため、保育園などでカラーパレットを用いたワークショップを楽しく実施できました。

新しい「七五三」の形を提案

カラーパレットは親子で使用してもらえる機会や、お母さんが娘さんと一緒に楽しく使用することもできます。例えば、七五三のタイミングでも、和装で美容院で髪をセットするイメージが一般的ですが、家族の形や装い方には多様性があり、自由な選択が尊重されています。

家族の多様性や価値観を、フォトグラファーの花盛友里さんと協力し、7NaNaturalのメイクと組み合わせて撮影するなどのプロモーションもおこないました。

サステナブル系ブランドが支持され続けるために大切なこと

中村さん:私達は2年目に突入したばかりで、継続的にということを私達もまさに今、チャレンジしてるところです。そのため、明確に伝えられることがまだない状態だと思いますが、自分たちの肌感覚として、お客さんとコミュニケーションを取る中で感じていることをお伝えします。

サステナブル系のブランドの場合、例えばCO2をどれだけ削減しているのか、成分やそれを畑で作るところからもこだわっています、などの情報を記載しているブランドもたくさんあります。しかし、生活者が商品を選び続けるということを考えると、四六時中ずっと社会の視点や地球環境の視点を中心としてものを考えたり、選択したりできる方は一握りだと思っています。

私達が考えているのは、まず順番として、自分個人を主語にしてプロダクトがどのような良い体験をその個人に及ぼすのか。そして、結果としてそれを選ぶことが、地球環境や社会にどのように良い影響があるのか、どういう配慮がされてるのかといったような、順番や主語の伝え方が、商品選び続けてもらうということにつながると思います。

生活者から見たときに、地球環境への配慮や社会性だけが頭でっかちになってしまっていると、そういうモードのときには選べると思いますが、日常的に選び続けてもらえるポジションを取るのはすごく難しいと思います。

もう1つ、アイディアを具体化する際には、さまざまな制約や実現可能な範囲があるため、透明性を持ってブランドの製品開発の方針を示すことが重要だと思います。

また、現時点で達成できていることもありますが、将来的にさらなる改良をおこなうために中長期的な時間をかけて取り組んでいく予定です、といった製品の開発プロセスや情報をお客様と共有することも重要だと考えています。

ブランドが立ち上がり、商品が完成した段階で終わりではなく、その後もブランドを育て続けることをお客様と共有すること。これにより、お客様との関係を築き、長く見守ってもらうという関係を作ることが大切かなとは思っています。

7NaNaturalが今後おこなってみたいプロモーションやコミュニケーション

中村さん:一番近いのは、先ほどの新色の訴求です。7NaNaturalのカラースティックは、プロダクトや7NaNaturalというブランドを介して、メッセージを発信するお客様ととても近い日常的なプロダクトです。

そのため、すごく近い距離で価値観を共有し、コミュニケーションを取るという、ある意味で新しいメディアの形だと私は捉えています。

また、購入した方が、商品をすごく気に入り、価値観にも共感すると、お友達にもギフトであげたくなったり、家族にも買ってあげたくなったりして、良い口コミにつながりやすいことも体感しています。プロダクトを返して世の中にメッセージを発信し、お客様に共鳴を生んでいくような、独自のプロダクト開発・プロモーションに引き続き取り組んでいけたらと思っています。

クリーンビューティのトレンドを両社の目線で解説

尾中:クリーンビューティトレンドを利用者の目線で解説ということで、中村さんが感じているトレンドがあれば教えてください。

メディアジーンが捉えているクリーンビューティのトレンド

中村さん:昨年、私たちが受賞したELLEジャポンのクリーンビューティーアワードを通じ、他の受賞者の活動や製品を見ていて、地球環境への配慮だけでなく、個人のエンパワーメントを重視した価値観もクリーンビューティに組み込まれてきていることを感じています。

このアプローチにより、機能的な価値だけでなく、情緒的な価値も合わさり、より独自性のあるクリーンビューティのラインナップが広がっていると思います。

透明性を保ちながら進化し続けることが大切で、素材の成分や畑のアップデート、研究開発のプロセスなど、具体的な取り組みを示すことで、お客様の共感を促し、進化する活動を続けていくことも大切だと感じています。また、少し前だとナチュラル系でも、オーガニック系コスメのようなくくりだったのですが、そこの本質が問われるようになってきていると思います。

さらに、従来オーガニックコスメやナチュラルコスメは、高くて良いものという選択肢しかなく、一部の人しか手に取り続けられない状況がありました。しかし、今では高品質で低価格帯のものが誰でも購入できることが大事だという考え方が増えてきていると感じます。

OEMメーカーサイドからみたクリーンコスメの需要の変化

三井:3年前からトキワでは、「クリーンビューティ」を掲げ、開発研究開発を先行しておこなってきました。国内の市場において当時はまだ「クリーン」という言葉を耳にすることはほぼありませんでした。

しかし昨今、「クリーン」という言葉を街でもよく見かけるようになり、徐々に浸透してきている感覚を覚えています。弊社がクリーンビューティに取り組み始めた3年前からすでに、「マイクロプラスチックビーズフリー」は、お客様からの要望を多数受けていました。

こちらについては、従来プラスチックビーズを使っていたものをシリカなどで代替し、天然由来処方に変更するなどの対応をおこなっていました。また、「紫外線吸収剤フリー」の要望も非常に多かったです。

幸い弊社では、紫外線吸収剤フリーのノンケミカルの処方を得意としており、時代の変化とともに処方のレパートリーも増えているような状況です。しかし、国内に比べ海外ではクリーンビューティがより進んでいます。その流れが今やっと国内にも広まりつつあるという感覚があります。

トキワで開発している注目のクリーンコスメ

三井:弊社の取り組みとして、「トキワクリーン」というさらに厳しい基準を設けた、クリーンビューティに則った研究開発を行っています。クリーンビューティの基準は、もともと欧米企業が掲げていた基準をもとにしています。

そこにプラスし、マイクロプラスチックビーズフリーや、タルクフリー、フェノキシエタノールフリー・クルエルティフリー・GMOフリー・RSPOなどを加えた独自の基準になってます。

そのため、欧米企業の多くが掲げているようなクリーンビューティの基準よりもさらに厳しい基準を設けています。

処方開発者にとってはなかなか難しい開発ではありますが、弊社の理念に共感していただけるお客様にいち早く処方を届けられるよう準備してきました。例えば以下のような処方を既にご用意しています。

カプセルが弾けて色が変わるハイライター

振り上げや振り戻しができる、スティック状のハイライトで、3分割のオイルワックス系ハイライターとなっています。

ハイライトの中にカプセルを配合しており、顔に塗ったときにカプセルがはじけて、色の変化が楽しめるような製品になっています。自然由来指数は98%です。

高発色・ロングラスティングなリキッドライナー

顔料とパールを高配合したリキッドアイライナーです。

自然由来指数を93%まで上げました。容器にもこだわりがあり、筆のコシにこだわった弊社のオリジナル容器となっています。コシがあるため、細い線を描くのに非常に優れています。発色も非常に濃く、一筆でしっかり書けます。

また、皮膜成分が入っているため、非常に高いラスティング性(※1)を維持しながら、お湯で落としやすい処方になっております。

※1)崩れにくく、メイクの仕上がりを長時間維持できること

水おしろいから誕生したファンデーション

続いて、水おしろいから生まれた化粧水のようなファンデーションで、2層タイプのファンデーションになっています。

通常、リキッドファンデーションやクリームファンデーションは、油性乳化製品というオイルをベースにした商品が多い傾向です。しかし今回、クリーンビューティを達成するために、水をベースにしたファンデーションを作りました。

水の部分には化粧水のような保湿成分を配合しており、ファンデーションの部分は下に沈降するような形で、着色剤と、その他粉体成分を配合しています。水おしろいは、カバー力が低くあまり塗った感じがない、いい意味でナチュラルといった仕上がりになります。しかし、今回の開発処方では、しっかりカバー力を持たせたまま、みずみずしく使用できるというのが特徴です。こちらの自然由来指数は98%です。

付け替え可能な木製レフィルペンシル

こちらは、容器側の開発です。弊社は元々、木軸の鉛筆から化粧品事業をスタートした経緯があり、木軸容器は得意分野でもあります。従来のペンシル製品というのは、すべてプラスチックで構成されています。しかし今回、容器の一番外側の部分を、30%から60%を木製に変換し、付け替え可能なレフィル容器にすることで、環境に優しい容器を実現しました。

繰り出しのアイライナーやアイブロウ、リキッドアイライナーなどに使用していただけます。この木の素材は「FSC認証®」という、むやみに森林伐採をしないために管理された森林から材料を調達しているという証明付きです。

トキワはこのFSC認証®を、OEMメーカーでもいち早く導入した企業です。(ライセンス番号:FSC®-C170726)

今後のブランドの在り方と商品開発について

尾中:では次に、中村さんの方から今後7NaNaturalのブランドをどのようにしていきたいかを簡単にお伺いできればと思います。

7NaNaturalをどのようなブランドにしていきたいか

中村さん:まずは、コスメの商品開発を独自の視点で掘り下げていくという点が挙げられます。

また、個人のエンパワーメントや、セルフケアに関する資料を作るなど、よりコスメという枠にとらわれない、大きな視座を持ったプロダクト開発や体験設計をしていけば、より面白い独自のブランドに育っていくのではないかと考えています。

人と環境に優しい化粧品作りが求められる中でトキワの開発者としての目標は?

三井:クリーンビューティなどの、自然や人に優しい化粧品作りとなると、やはり原料の制限が厳しくなります。開発者の目線からすると、開発者泣かせな部分はありますが、まだまだ未開拓な市場とも思っており、さまざまな縛りがあるからこそ偶然から生まれる新しい処方もできています。

そういった中で、消費者のニーズと企業側のニーズの両方に応えられるよう、制限のある原料の中から新しい処方を見出す、というのに一生懸命取り組んでいます。通常の縛りがない製品も使えるような化粧品に比べると、まだまだ機能や安定性の面で達成できてない部分はたくさんあります。

ここからさらに従来の化粧品と遜色ない、もしくはそれ以上の化粧品が作れるよう、これからもトキワが一丸となって、新しいものを開発していこうと思っています。

Q&A

尾中:最後に、皆さんからいただいた質問に対して回答をして本ウェビナーを終えたいと思います。。

【質問】サステナブルな製品は、どのようにすれば消費者に魅力的に見えますか?

中村さん:私たちの場合、コスメはあくまでも暮らしを豊かにする、価値観を後ろ盾するツールだと考えています。そのため、「環境配慮」「社会配慮」などの、小難しかったり、考えさせてしまったりするようなメッセージ発信ではなく、コスメとして可愛くて、楽しくて、わくわくするような、素敵な世界観の認知と共感が第一にあるように情報設計をしています。

生活者にとって、今の自分にGOODで、結果として地球環境や社会視点でのサステナブルも叶えるという、2段落ちで共感が醸成されるようなイメージを持っています。

【質問】需要の高い原料や資材はなんですか?

三井:処方では、UV防御機能が必要なファンデーションや化粧下地においてナノフリーを要望されることが多いため、ノンナノの紫外線散乱剤の需要が高まっているように感じています。

また、配合原料についてRSPO認証品を必須とするメーカーも増えてきており、既存の処方においても対応原料に切り替える取り組みを積極的におこなっています。容器については、リサイクルがしやすい単一素材のモノマテリアルやレフィル、PCR材料の需要が増えています。

また、EUを中心に安全性における規制により脱スチレン、脱POMの動きが広がっているため、需要の多いアイテムから順次他の材質への置き換えに取り組んでいます。

【質問】生活者のニーズはどのようなところにあると考えますか?またそれに対してどのようにブランド体験を提供していますか?

中村さん:2021年にわたしたちが実施した、Z世代600人弱を対象にした「サステナビリティに関する意識と行動の実態調査」から、今求められているのは、地球環境や社会の持続可能性だけではなく、個の持続可能性、つまり自分らしく生き続けることへの欲求が高まっていることがわかりました。

その結果を踏まえ、7NaNaturalでは、個人の価値観や生き方をエンパワーすることをブランドミッションとして、プロダクト開発から、体験設計、プロモーション文脈の開発までを行っています。

【質問】7NaNatural様が1年で各アワードを受賞するに至った背景や、評価されたポイントをお伺いしたいです。

中村さん:製品の機能的な価値だけにこだわるのではなく、情緒的な価値、つまりお客様の価値観や生き方をどうエンパワーするブランドなのかを体験設計してきたこと、メッセージ発信してきたことが、他社がやっていない、より本質的な意味での“クリーン”なブランドとして評価されたようです。

また、どこのメーカーさんもやっていない、返送用封筒での“循環型体験”については、どのメディアやアワードでも評価が高かったです。

まとめ

今回は、株式会社トキワが主催した、クリーンビューティについてのウェビナー内容をご紹介いたしました。

ウェビナーをもっと詳しく聞きたい・知りたい方は、フルで見れる動画もご用意いたしますので少々お待ちくださいませ。

ページトップへ