カラーコスメOEM国内トップシェアのトキワによる化粧品OEM製造プロジェクトの事例・インタビュー記事
「使う楽しさ」を追求するクリーンビューティコスメ|7NaNaturalに学ぶ、新時代のブランディング術
美容業界に新しい風を吹き込んだ「7NaNatural(ナナチュラル)」。メディア業界出身の中村圭様がブランドディレクターとなり立ち上げた、天然由来成分100%にこだわるクリーンビューティーブランドです。「人生も、世の中も、ナナイロに。」をコンセプトに、従来のナチュラルコスメの概念を覆す鮮やかな発色と使いやすさを実現。カラースティックやクレンジングバームなど、革新的な製品で注目を集めています。
本記事では、ブランドの誕生からトキワとのパートナーシップ、製品開発へのこだわり、マーケティング戦略について詳しくご紹介します。
株式会社メディアジーン 中村 圭(なかむら けい)様
2007年、株式会社メディアジーン入社。2011年にメディア開発室 室長に就任。
「WOMEN'S HEART LAB.」や「THE STUDIO. GLOSSY & MASHING UP」などのプロジェクトで、女性を起点とした社会課題解決型マーケティングやパーパスドリブンな企業活動支援に携わる。2019年11月、株式会社トキワによる"ビューティーアクセラレータープログラム"でアワードを受賞し、2022年3月にはクリーンビューティーブランド「7NaNatural」をローンチ。現在、株式会社メディアジーンにて「7NaNatural」のブランドディレクター兼クリエイティブディレクターを務める。
ナナチュラルのブランド概要
ナナチュラルは、株式会社メディアジーンが展開する、天然由来成分100%にこだわった、クリーンビューティを重視するコスメブランド。
天然由来成分100%で7つの主要な化学成分(鉱物油・石油系界面活性剤、紫外線吸収剤、合成香料、パラベン/防腐剤、シリコン、アルコール、タール系色素)を使用しないという厳しい条件下での製品開発を実施。高発色で使いやすい製品を提供しています。
主力商品のカラースティックは、口紅やチーク、アイシャドウなど、顔のどこにでも使える多機能なアイテムとして人気を博しています。また、環境への配慮やコスメロス対策など、サステナビリティの観点も重視した製品設計を実施し、ナナチュラルならではの価値を生み出しています。
ナナチュラルの誕生と現在までの取り組み
ナナチュラルは、メディア業界での経験を持つ中村様の想いと、化粧品OEMメーカーであるトキワとの出会いから始まり、2022年にブランドが立ち上げられました。
――ナナチュラルのブランド立ち上げから現在までの取り組みについて教えていただけますか?
中村さん:実は以前から、いち生活者として、「もっとこういうナチュラルコスメがあったらいいのに!」「化粧品会社の発信はなぜ画一的で、あまり個性がないのかな?」「こういうメイク体験はしたくないな」などと思うところがいろいろとありました。
なので、メディア企業である強みを活かし、商品の良さという機能的な価値だけでなく、その商品がどんな気持ちにさせてくれるのか、どんな風にお客様の人生をエンパワーするのか、みたいな情緒的な価値も含めて、きちんと情報発信していこうと思っていました。
ナチュラルコスメの市場で、機能的価値と情緒的な価値双方を掛け合わせたブランドは、3年前の立ち上げ時にはあまりなかったんです。多くのナチュラル系ブランドは、ただ「自然由来の成分を使っています」という事実や、その成分に関する専門的な説明だけで終わっていました。でも、それだけでは不十分だと感じていました。
私たちが目指したのは、「ナチュラルだけど、カラーを選んでいても見ていても可愛くて楽しい」というものです。従来のナチュラルコスメの概念を覆し、新しい価値を提供できたらと思いました。
ブランドを継続する上で意識していること
――ブランドを継続していく上で、常に意識していることはありますか?
中村さん:正直であることですね。例えば、カラースティックの容器をリフィル可能にできたらいいのですが、予算の制約もあってすぐには実現できないといったことも、オープンにお客様に伝えています。
また、「ナチュラル&プレイフル」というコンセプトを大切にしています。ただナチュラルというだけでなく、楽しさや自由な表現を重視しているんです。例えば、メイクの仕方について「こうしなければいけない」というルールは設けていません。むしろ、「ズボラでも大丈夫、失敗しないんです」といった、より自由で楽しいアプローチを提案しています。
トキワとの出会いとパートナーシップ
ナナチュラルの誕生には、化粧品OEMメーカーであるトキワとの出会いが大きなきっかけになったと振り返ります。
――トキワとの関係性について、どのように感じていらっしゃいますか?
中村さん:私たちは本当にトキワさんにおんぶに抱っこの状態なんです。トキワさんが認めてくれなければ、ブランドの立ち上げ自体が実現しませんでした。単にお金を払って製品を作ってもらうという関係ではなく、本当のパートナーのような存在だと感じています。
私たちはものづくりの経験が乏しいので、「こういうものを作りたい」というイメージは持っていても、そのノウハウは持っていません。でも、そのイメージを伝えると、トキワさんが叶えてくれるんです。私たちが支払っている金額以上の何か——熱量やアイディアなどをたくさんもらっていると感じています。
ナナチュラルの製品開発へのこだわり
――ナナチュラルの製品開発において、特にこだわっている点はありますか?
中村さん:はい、いくつかあります。まず何より、天然由来成分100%にこだわっています。私たちは7つの主要な化学成分を使用しないという、かなり厳しい条件を掲げているんです。
具体的には、鉱物油、石油系界面活性剤、紫外線吸収剤、合成香料、パラベンや防腐剤、シリコン、アルコール、タール系色素です。これらを一切使わずに製品を作るというのは、正直なところ、大変なチャレンジでした。
――それは確かに厳しい条件ですね。そのような制約の中で、製品の機能性は保てているのですか?
中村さん:はい、それが私たちの大きなこだわりの1つなんです。
例えば、最近発売したクレンジングバームは、天然由来成分100%でありながら、ちゃんとマスカラまで落とせて、しっとりもっちりとした洗い上がりを実現しています。これを実現するのは本当に難しかったんですよ。これは、トキワさんとの協力があってこそ実現できたものです。
――天然成分と機能性以外に、製品開発で重視していることはありますか?
中村さん:使いやすさと楽しさも非常に大切にしています。私たちのコンセプトは「ナチュラルだけど、カラーを選んでいても見ていても可愛くて楽しい」というものです。ナチュラルコスメは"地味"というイメージを覆したいんです。
ナナチュラルのアイテムをご紹介
ナナチュラルは、製品開発理念やブランドコンセプトを体現する商品を展開してきました。ブランドの顔とも言えるカラースティック、カラーパレットに続き、2024年にはクレンジングバームも発売。これらの製品は、天然由来成分100%でありながら高い機能性と使いやすさを実現しています。
カラースティック
ナナチュラルの代表的な製品である「カラースティック」は、ブランドの理念を体現するアイテム。天然由来成分のみを使用しながら、高発色と高保湿を両立させた多機能コスメとして注目を集めています。
カラースティックの最大の特徴は、唇はもちろん、目元や頬にも使える万能な使用法にあります。また、全7色のラインナップでそれぞれが鮮やかな発色を実現し、幅広い表現を可能に。1.7gのミニサイズながら使い切れるサイズ設計により。コスメロスの削減にも貢献しています。
環境や健康への配慮も徹底しており、製造過程において動物実験を行わない「クルエルティフリー」を実践。一部のカラー(04 キ、07 ナナ)はヴィーガン対応となっています。
容器には再生プラスチックを使用し、使用済み容器の回収・リサイクルも実施。これらの取り組みは業界からも高く評価され、「サステナブルコスメアワード2022」や「エル クリーンビューティアワード2022」などでの受賞歴があります。
カラーパレット
ナナチュラルの「カラーパレット」は、天然成分のみで作られているにもかかわらず、鮮やかな発色を実現。アイシャドウやチークなど、顔の様々な部分に使用でき、1つの製品で多彩な表現ができます。
また、メイクアップ初心者でも簡単にぼかすことができるよう設計されており、ブランドの使いやすさへのこだわりが詰め込まれています。
カラーパレットの容器には再生プラスチックを使用しており、使用済み容器は回収してリサイクルする取り組みも実施。価格も2,000(税込)と手頃で、幅広い年齢層にアクセスしやすい設定となっています。
クレンジングバーム
ナナチュラルは2024年4月、新たな主力商品としてヴィーガンクレンジングバーム「hozuri(ほおずり)」を発売しました。クリーンビューティへのこだわりを体現しつつ、高い洗浄力と使用感の良さを両立させています。
「hozuri」は、ISO16128準拠の天然由来成分のみを使用。動物由来成分を一切使用しないヴィーガン対応製品となっています。11種類のエッセンシャルオイルが配合されており、みずみずしい植物の香りを楽しみながらクレンジングでき、しっとりの洗いあがりに仕上げてくれます。
ナナチュラルのマーケティング戦略
7NaNaturalはインフルエンサーとのコラボレーションや、SNSを活用した口コミ戦略などのユニークなマーケティング戦略を展開。これらの戦略は、限られたマーケティング予算の中で最大の効果を生み出すために工夫されたものです。
本章では、ナナチュラルが実施したマーケティングの事例をご紹介します。
半年で4,000本の販売実績。インフルエンサーとのコラボレーション事例
ナナチュラルは、インフルエンサーとのコラボレーションを通じて、製品開発から販促までを一気通貫して行うアプローチを採用。代表的な事例が、メイクアップアーティストのnagisaさんとのコラボレーションです。
引用:w_tokyo様のInstagramより
――ブランドで実施したマーケティングについて教えてください。
中村さん:2023年7月に、メイクアップアーティストのnagisaさんとコラボレーションした商品を出しました。これは、私たちのブランドコンセプトに共感してくれる方と商品自体を一緒に作り上げるという新しい試みでした。インフルエンサーの方と一緒にカラーから作り、わたしたちのブランドのプロダクトという感じでプロモートしてもらいました。
これが大成功で、1ヶ月で2000本完売しました。私たちの規模では本当にすごいことだと思います。限られたマーケティング予算の中で、インフルエンサーの方に主体的に発信してもらう形が当たったんです。結局、半年で4000本完売という結果になりました。
この成功を受けて、今年は新規のお客さんにもっと出会えるように、効率的なマーケティング予算の活用と、コラボレーションによる新色の展開を計画しています。今年は3回のコラボレーション新色を予定していて、それぞれにメッセージ性を持たせ、他のブランドとは違った形でプロモーションしていく予定です。
SNSを活用した口コミ戦略の成功
引用:7.nanatural様のInstagramより
――SNSを活用した口コミ戦略についても教えていただけますか。
中村さん:私たちは限られたマーケティング予算の中で最大の効果を得るため、SNSを活用した口コミ戦略に力を入れています。特に、ブランドの価値観に共感してくれるインフルエンサーや顧客との深い関係性構築を目指しています。
具体的には、1人1人のインフルエンサーや顧客との関係性を大切にしています。新商品が出た時にはギフトをお送りし、そのあとの感想をDMやLINEで直接やり取りします。そうすることで徐々にインフルエンサーの方々も7NaNaturalのファンになってくれました。今では応援団のように、自発的に製品の良さを広めてくれてくださる方もいらっしゃいます。例えば、クレンジングバームが気に入ったら、自ら写真や素材をSNSでシェアしてくれるんです。
――そのような丁寧なコミュニケーションによって、どのような効果がありましたか?
中村さん:インフルエンサーや顧客との良い信頼関係を築けていると感じています。また、品質の高さも自然な口コミにつながっています。
例えば、クレンジングバームの発売から約1ヶ月後、多くの方々が「素晴らしい」「もうこのビーガンクレンジングだけで十分」といった高評価のコメントを自発的に投稿し始めました。これらの口コミの広がりにより、広告費を抑えつつ、ブランドの認知度向上と顧客基盤の拡大を実現できています。
――今後のSNS戦略についてはどのようにお考えですか?
中村さん:今後もコミュニティ形成を重視したアプローチを継続していく予定です。SNSを通じて、より多くの方々と直接つながり、ナナチュラルの価値観や製品の魅力を伝えていきたいと考えています。また、ファンの方々との対話を通じて、新製品開発のヒントを得たり、ブランドの進化につなげていきたいと思っています。
ブランドの成長と今後の展望
――今後のチャレンジについてはいかがでしょうか?
中村さん:これからが本当の勝負だと感じています。立ち上げフェーズは終わり、次はどうやってブランドを存続させ、成長させていくかが課題です。外部のステークホルダーを増やし、専門家の知見を借りながら、短期間でブランドを確立させていく必要があります。海外展開なども視野に入れています。
具体的には、新商品の開発や既存商品のラインナップ拡充、そして効果的なマーケティング戦略の構築が重要だと思っています。
例えば、今年10月には新しいコラボレーション商品として、「デニム」という名前の赤リップを出す予定です。これは、ファッションブランドとのトリプルコラボレーションで、洋服も一緒に作ります。こういった新しいチャレンジを通じて、ブランドの認知度を高め、新規顧客の獲得にもつなげていきたいと考えています。
ただ、自分たちらしさを失わずに成長していくバランスが重要だと思います。常に「ナチュラル&プレイフル」というコンセプトを忘れずに、お客様に寄り添った商品開発とコミュニケーションを続けていきたいです。
まとめ
ナナチュラルは、これまでの成功を基盤としつつ、新たな成長戦略を模索しています。ブランドコンセプトである「人生も、世の中も、ナナイロに。」を保ちながら、より多くの人々に製品を届けるための挑戦が続きます。
弊社トキワもパートナーとしてこれからもサポートを続けてまいります。